命もいらぬ、名もいらぬ、官位も金もいらぬ、始末に困る人。
この常人のなしえない捨て身の行為と人格に、西郷南洲は感動した。
それが西郷と勝の有名な江戸城明け渡しの会談を容易に下のは言うまでもない。
もし、山岡という存在がなかったなら、歴史の歯車はさらにおびただしい血を流したかわからない。
鉄舟の偉さは、指摘されれば、すぐに間違いを悟ったこと。
「聖恩の有り難さ、食うに困らなくなったからといって、昔を忘れるようじゃいけませんな。」
「何も食わぬ日が月に七日ぐらいあるのは、まぁいいほうで、ことによると何にも食えぬ日がひと月のうちに半分ぐらいあることもあった。なぁに、人間はそんなことで死ぬもんじゃねぇ。これはおれの実験だ。一心に押していけば、生きていけるものだ。」